「第三回!四天宝寺テニス部、お悩み相談たいかーい!!」
一軍メンバーの強化合宿最後の夜。
その唐突な企画はひとりの乙女系男子の発案によるものだった。
「だって、悩みとか相談し合ったら新密度が増して、よりチームワークが深まると思わない?」
「やったら余所でやってください。」
「だって、一番お悩みを抱えてそうなのが、満場一致で謙也くんやってんもん。」
「じゃあ、謙也くんだけ連れてってください。俺は寝ます。」
「財前!お前、薄情すぎやろ!俺の悩みをちょっとは聞いてくれてもええんとちゃう?!」
「ひーかーるーちゃーん。冷たいぞー。」
「財前、もう諦め。」
「…はぁ。しゃーないッスわ。」
「でなぁ、侑士がな…」
「はぁ。」
昼間の練習の疲れか、謙也くんの話が長すぎるせいか、一人、また一人と睡魔に負けて、現在起きて謙也くんの話を聞いているのは自分と部長だけだ。
謙也くんの話によると、ユーシとか言う人のせいで苦労が絶えないらしい。
中学から東京の学校に通い始めたから、もう迷惑を掛けられることは減るだろう、と安心していたのに、電話がかかって来る
だの、宅配便で大阪の味を送れとうるさいから冷凍たこ焼きを送ってやれば、違うと言って送り返されただの。
…小学生のやりとりか。
ってか、ユーシって誰やねん。
「財前!ちゃんと聞いとらんやろ!」
「はぁ。その前に、ユーシって誰ッスか。」
「そっか!財前にはまだ言うとらんかったな!忍足侑士、って言う同い年の従兄弟がおんねんけど、今は東京の氷帝学園に通ってんねん。」
「氷帝?」
「せやで。テニスもそこそこ強いから財前も一回は聞いたことあるやろ?」
一回どころか毎日のように聞いている。
自分の従姉がまさしく氷帝に通っているのだ。
しかもその『ユーシ』と同い年。
そのうえ、確かテニス部に知り合いがいるとか言っていた。
もし、その知り合いが『ユーシ』だったら…?
「謙也、ええかげん財前を離したり。愚痴ばっか聞かされて可哀相やろ。」
「俺は別にええッスよ。白石部長。謙也くん、そのユーシって人への不満、思う存分吐きだしたってください。」
「財前!お前、ほんまええ奴やな!ありがとう!今夜は全部ぶっちゃけさせてもらうで!」
ゴールデンウィーク最終日。
光も合宿から帰って来たころかなぁ、なんて思いながら明日の時間割を確認する。
そろそろお風呂に入ろう、と立ち上がった時、携帯が鳴った。
「もしもし、光?」
「ああ。ごめん、こんな時間に電話して。」
「ええけど、合宿から帰ったばっかで疲れてるんとちゃうん?どないしたん?」
「俺は平気やねんけど、ちょっと気になることがあって。」
「ん?何?」
「前にテニス部で仲良いやつがおる、言うてたやろ?名前、なんて言うとったっけ?」
「ああ、萩と亮のこと?」
「テニス部の知り合いはその二人だけ?」
「えーと、あとは黒木くんと鳳くんくらいかな…なんでそんなこと聞くん?」
「別になんも無いねん。ただ、忍足ユーシってヤツには気をつけなあかんで。」
「忍足くん?なんで?」
「とにかく、気をつけなあかん!」
「うん?まあ、あんまり目立ちたくないから、よっぽどのことが無い限り、私からは近寄らへんけど?」
「やったらええねん。じゃあ、夜遅くにごめんな。おやすみ。」
「おやすみ。…なんだったんだろ、光。」
Reflection
ヒロインの心配をする光くん。
謙也は侑士の女癖がとっても悪い、と光に吹き込みました。
「『足のキレイな子がタイプや』とか平気で公言しよんねん!変態や!」とか謙也が言うのを聞いて、心配すればいいと思う。
REPLAY
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