Q.大阪名物と言えば?
A.個人的には粉もんです。
部活の終わった二人を引き連れて我が家へやって来たわけですが。
「お前、金持ちだったんだな…。」
「うん。お父さんはとてもよく稼ぐ人です。」
「謙遜しないところがらしいね。実際大きな家だけど。」
そりゃ、言動がたまに大人げないことを除いたら自慢の父親ですから。
褒められれば嬉しくもなる。
「萩の家も一等地に建つにしては広かったでしょ。」
「俺の家は、旧家だからね。敷地は結構広いけど平屋だから知れてるよ。」
「俺、お前らを家に呼ぶのが憂鬱になってきた。」
「なんで?確かに自分でも良い家だとは思うけど、建てたのはお父さんだから。私自身はビタ一文たりとも稼いでない扶養家族の身だからね。」
前世で色々なバイトを経験した学生だった私は、両親から中学生にしては多めのお小遣いを貰っても、思い切って使うことができない。
ついつい自給計算の癖が出て、『この服なら、あのバイトで二日かかるな…』などと考えて、結局貯金してしまうのだ。
だから、暮らしぶりとしては氷帝学園の生徒にしては質素な方だと思う。
萩も裕福な家だろう、と言うのは家に遊びに行く前から、使っている小物やお弁当の中身から察していたが、基本的に物欲が無い子なので目立たない。
「お前のその台詞、跡部に寄り集まっている女共に聞かせてやりたいぜ。」
「ああ、父親の会社の名前を振りかざして寄って来る煩い子たちのことか。確かにそうだね。一回ガツンと言ってやってよ。」
「嫌だよ。なんで私が。って言うか、萩は笑いながら怒るのやめてくれない?言葉に込められた悪意と綺麗な表情の差に酔いそうだから。」
いつまでも家の前で立ち話をしているつもりはないので、一応インターフォンを鳴らしてお母さんに帰宅を知らせてから、合鍵で家に入る。
律義に靴を揃えている萩を見て、慌てて自分も靴を揃える亮がおかしい。
思わず吹き出すと、軽く睨まれた。
「いらっしゃい。滝くんと宍戸くんやんね?がいつもお世話になってます。」
「いえ、こちらこそ。お邪魔します。」
「お、お邪魔します。」
ここでも慣れた様子で挨拶する萩と、緊張している亮の差がおもしろい。
可愛すぎるぞ、宍戸亮。
「ちゃんと用意しといたから、すぐ焼けるで。テニスバッグはどこに置いとく?」
「ありがとう。バッグ、玄関でも大丈夫?」
「うん。構わないよ。宍戸も、大丈夫だよね。」
「ああ、むしろ汚れてるから気をつけろよ。」
ダイニングにはバッチリ準備が整っていた。
手を綺麗に洗って、四角いテーブルを三人で囲む。
「見ての通り、今日はたこ焼きを作ります。大阪時代から、私と一緒に育ってきた由緒正しいたこ焼き機なので、各自心して焼きにかかるように。」
「俺、家庭用たこ焼き機なんて、初めてみたよ。」
「関西人は大抵持ってる、ってのは本当だったんだな。」
「大阪時代、少なくとも私の周りの子はみんな持ってたかなぁ。」
休日のお昼とか、よく光と一緒に焼いて食べた。
だから、私のたこ焼きづくりの腕前はなかなかのものだと思っている。
少なくとも、友達にご馳走できるレベルではある。
「ちょっと、亮。生地が少ないよ!具を入れた時に穴から溢れるくらいで丁度いいんだよ。ケチケチしてたら丸くならないでしょ。」
「、気合い入り過ぎじゃない?」
「お前、そんなヤツだったか?」
「たこ焼き、好きなの!おいしいのが食べたいの!だから協力して。」
手際の良い光やお母さんも無く、初心者二人を連れてのたこ焼き作りは最早至難の業だ。
好物くらい、おいしくいただきたい。
多少、人使いが荒くなるのも許してほしい。
「よし、食べようか。」
そんなこんなで出来上がったたこ焼きはまぁまぁ美味しかった。
萩はちゃっかり自分の分にたこを二つ入れていたし、亮もなんだかんだでチーズを入れたりウインナーを入れたり、楽しんでいた。
「簡単そうに見えて、結構難しいんだね。」
「そうだよ。たこ焼きは奥が深いからね。甘く見てもらっちゃ困るよ。」
「お前、どんだけたこ焼き好きなんだよ。」
その後も何回か焼いて、満腹になった萩と亮は帰って行った。
結局たこ焼き一緒に焼いて、食べただけ。
何ともまぁ、私達らしいあっさりしたお宅訪問でした。
「それでね、ちゃんの友達、二人ともカッコイイ子やったんよ?」
「男の子なん?!」
「前に言うたやんか。滝くんと宍戸くんと三人でお昼食べとるらしいよ、って。それに男の子の友達がおってもええやろ。」
「やけど…。」
「あんまりうだうだ言うたらちゃんに嫌われるで。」
夕飯時に今日の昼間の話になったものの、案の定お父さんは拗ねた。
娘にボーイフレンド(正しく男友達であるが)が、できたことに複雑な心境らしい。
自分で言うのもなんだけど、可愛がられて箱入りと言ってもいいくらい大事に育てられてきたので、お父さんの気持ちもわからなくもない。
ここはフォローの一言でも入れるべきか、と思った時だった。
「で、どっちが彼氏?」
お母さんの悪戯っ子のような微笑みは可愛いんですけど。
盛大に咽て苦しんでいるお父さんがあまりにも可哀相ではありませんか。
「そのうちお嫁に行くねんから、こんくらい慣れとかなあかんよ。結婚式でどないするつもりなん。」
「考えてんけど、婿養子をとればいいと思う。」
「結婚したら夫婦で住むのが当たり前やろ。いつまで干渉するつもりやねん。」
大真面目にのたまうお父さんの頭にデコピン(物凄く痛い)を食らわして、ツッこむお母さん。
ぶっちゃけ、私の理想の夫婦像はこの二人だったりするんだけど、ちょっと考え直したくなってきた。
「お父さん安心して。まだ当分の間は結婚しないから。それとお母さん、お父さんで遊ぶのは止めてあげて。」
なんだかんだで、我が家は今日もにぎやかです。
Reflection
リハビリで閑話のようなもの。
なかなかプロット通りに進まない…
予定では、二年生になってる筈だったんだけどな。おかしい。
今後は時間がいきなり飛ぶこともあるかと思いますので、あしからず。
REPLAY
Copyright c 2010 Minase . All rights reserved.