やっぱり電話じゃ物足りない。
「ちゃん、ゴールデンウィークはもう予定入れてしもた?」
「いや、なんも無いよ。予定が入る予定すらないけど、なんで?」
自分で言ってて悲しかったが、事実私のスケジュール帳の5月のページは驚きの白さを保っている。
萩と亮は部活だから遊んでくれないし、一応それなりに仲良くなった女の子たちは、跡部景吾の試合を応援しに行くらしい。
よって輝かしいゴールデンウィークに私は独りきりである。
大型連休なんて燃え尽きてしまえ。
「やったら、大阪、帰らへん?久しぶりに光くんとも会いたいやろ?」
「行く!」
大型連休バンザイ。
「今日はやけに機嫌がいいね。」
「そう見える?」
萩に指摘された通り、私は浮かれている。
だって久しぶりに光に会える!
まだ離れて一カ月なのに大袈裟だ、と両親は呆れていたけれども、そんなことない。
可愛い可愛い従弟に会いたいと思って何が悪い。
身長はそんなに変わって無いだろうなぁ、とか。
ますますカッコよくなってるんだろうなぁ、とか。考えるととても楽しみ!
油断するとすぐに顔がニヤついてしまう。
「ゴールデンウィークに、従弟に会いに行くことになったからね!」
「いとこ?どこに住んでるの?」
「大阪。大変楽しみなのであります!」
「キャラが変わるほど嬉しいんだね。」
萩に頭を撫でられた。
普通ならここはときめく場面なんだろうけれど、萩の瞳が子供を見るお父さんの瞳なので、全くそんな風にはならない。
私の方が大分年上なのに。
転生してから身近にいる人間は皆大人びている。
中身反則のくせに違和感なく同じレベルで会話している自分が悲しい。
結局、旅行の日まで待てなくて光に電話を掛ける。
今の時間なら、きっと自分の部屋で寛いでいるはず。
パールホワイトの携帯は光と色違いだ。
お気に入りのクッションを抱えてコールする。
「?どないしたん?」
「こんばんは、光。ゴールデンウィークにそっちに帰ることになってんけど、聞いた?」
「さっき聞いた。」
「うん。それでな、光、ゴールデンウィーク予定入れてへんかった?」
「大丈夫や。しゃあないから家で待っとったるわ。」
「ありがとう。東京のおみやげ、買ってくわ。」
ダメだ。絶対、今の顔は誰にも見せられないくらいニヤけてる。
光の声が心なしか明るいのがすごく嬉しい。
光も楽しみにしてくれてるのかな。
思えばここしばらく、電話では私が甘えるばかりだった。
今度会ったらたくさん光にお返ししなきゃ。
でも、正直私もこっちにきたばっかで、東京のお土産とか何がいいのかさっぱりわからない…。
これは、早急に誰かに相談すべきだ。
「東京のお土産、ねぇ…。」
私が相談相手に選んだのは那智先輩だった。
先輩は携帯ストラップだったり、ヘアゴムだったり、そう言ったさり気ない小物のセンスがすごくいい。
だからきっと、いいアドバイスを貰えるだろう、と思ったんだけど。
「難しいわねぇ。お菓子とかなら、美味しいお店知ってるけど、大阪でも美味しいものは十分手に入るでしょ?」
確かにそうだ。
昔はどうだったか知らないが、今は大阪のお菓子屋さんも美味しい所がたくさんあるし、ちょっと足を延ばして神戸まで行けば、洋菓子は美味しいものが手に入る。
うーん。これは問題だ。
こんなことなら積極的に東京開拓しとくべきだった。
「食べ物じゃなくていいなら、服とか買って行ってあげたら?東京限定のTシャツとか、買って行ってあげたら喜ぶんじゃない?」
それは盲点だった。
確かに光はお母さんたちの影響で同年代の男の子たちと比べてお洒落だ。
Tシャツなら多少サイズが前後しても着れるだろうし。
「そうですね。服にします。アドバイスありがとうございました。」
「いいえ。私でお役に立てたならよかったわ。」
早速、明日にでもお母さんに付き合ってもらおう。
なんだか、自分の服を選ぶ時よりも気合いが入っているかもしれない。
スキップしそうな勢いで校門をくぐった私は、その後の会話を聞き逃したので、意志疎通に齟齬が生じていたことを知らなかった。
「あ、桂木先輩。が探していましたよ?」
「滝くん、だったかしら?大丈夫よ。ちゃんとはさっき会えたから。」
「よっぽど、いとこに会えるのが嬉しいんですね。」
「ええ。とっても仲がいいみたいだったから。光ちゃんとか言ってたかしら。ちゃんみたいな可愛い子なのかしらね?羨ましいわ。私の従兄弟は男の子ばかりだから。そう思わない?」
「俺はいとこ自体いないので、羨ましいですね。」
「そうよね。女の子同士ならお洋服の話題で盛り上がれるし。」
Reflection
やっぱりガマンできなくて早々と光と再会させることに。
名前だけで光をおんなのこと勘違いさせるネタは一回はやっときたかった。
満足して、ますん。
久々にイチャコラさせたい…!!
ちょっと糖分がほしい…。
REPLAY
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