いちばん近くにいるから。

















無言でも隣にいるだけで安心する、そんな関係。









005:指定席の関係








、帰るで。」






「うん。今日、日直だからちょっと待って。」









私にとって大きな転機となった光との出会いからはや十年。


あんなに可愛かった従弟は小学五年生にしてもう既に生意気さの片鱗を見せ始めている。


昔は『ちゃん』だった呼び方もいつの間にか呼び捨て。


一体どこで間違えたのか。


大人びたクールボーイに成長してしまった。








「もう一人はどないしてん。」






「なんか、習い事があるらしくて急いどったから先に帰ってもらってん。」






「あほ。なんでそこで帰らすねん。」






教室の窓を閉めながら光がぶっきらぼうに呟く。


光の優しさはわかりにくい。


きっと中身も小学生だったら気付かなかっただろうけれども、私の中身ははっきり言って反則的。おまけに十年間積み上げてきた間柄で。


今怒っているのも私を心配してくれているからこそだと知っているから。





「ありがとう光。」




「さっさと帰んで。」






自然に差し出される手に指を絡める。


他愛無い話をして、家まで帰る。


それは光と同じ小学校に通うようになってからもはや習慣となっている。


高学年になった頃に一度、同級生にからかわれた。


この位の年頃の子はそういう話題ですぐに盛り上がっちゃうから。


学年が違うのに一緒に帰って、あまつさえ手まで繋いでいる従姉弟同士を放っておくわけもなくて。


光はキツイ事を平気で言うタイプだけれど女の子にモテるから、男の子からのやっかみ半分の悪口が酷かった。


私にしてみれば小学生の悪口なんか可愛いものだから全然平気だけれど、光は違う。


結構しつこく言われたからさすがにもう来ないかな、と思っていたからその日の放課後も普通に教室に迎えに来た時は内心驚いたけれど、嬉しかった。




だから私は光が手を差し伸べてくれる限り握り返すことに決めた。


きっとそのうち私よりも大事な女の子ができるだろうけど。


その時は心から応援するから。


当分、一番の座は譲れません。



















Reflection



きっと可愛かったんだろうな、ちび財前。

ちみっこの関西弁は異常にかわいいです。



REPLAY
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