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今度は、逃げなかった。
逃げるわけにはいかなかった。




011:神聖な誓いにも似て 
【宍戸亮】







滝と試合をして、勝った。
覚悟の印に長い髪をばっさりと切って、俺は再びレギュラーの座を手にした。

無理を言って頼み込んだものの、それは正当に手に入れたものだ。
何も後ろめたいことはない。


そう、頭ではわかっていても、やはり心境は複雑で。



「その、滝…、昨日…」

「謝ったら殴る。」

「それ、俺の台詞だよ」


即答したを嗜める滝はいつも通り穏やかだ。
きっと滝は滝で整理が出来ているのだろう。

けれども、俺は滝のように大人じゃない。

レギュラーに戻れたことを嬉しく思う反面、未だもやもやとしているものが晴れなくて、思わず噛み付く。


「でも、俺は!」


「昨日のはお互い全力で挑んだ結果だ。俺はきちんと納得してる。宍戸亮改造計画の作戦参謀は俺だったんだよ?強くなって当然。」


わかっている。
俺たちは何も間違っていない。
わかってはいるのだ。
けれども、なんだか上手く言えないけれどすっきりしない。
気持ちが、追いつかない。
伝えられないことのもどかしさに、唇を噛み締める。


少しの沈黙。
滝が小さく溜息を吐いた。


駄々をこねているだけだとわかっている。
けれども、俺はこのままではいけないと思う。

滝に甘え過ぎているのだ。

大切な友人だからこそ、対等でありたい。
そう思うのは、我儘だろうか。



「萩はどうするの?テニス部。」


なんでもないことのようにサラッとの口から出た疑問。
しかしそれは俺にとっては聞き流せないものだ。
思わず勢いをつけて顔を上げた。


「俺はこれから、サポートに回ろうと思う。作戦参謀のポジション、割と気に入ったんだよね。それに今、俺がやめたらみんな困るしね。事務的なことは一任されてるから。」


とりあえず退部の意志がないことに安心していると、滝は綺麗に笑ってこちらを見据えた。


「俺を倒してレギュラーに戻った以上、これからの試合、負けたら許さない。それに俺が絶対に負けさせないから。」



敵わない、と思う。

こいつはいつも、俺の中の整理しきれない感情を掬いあげてくれるんだ。


滝は、強い。


と滝と3人で2年間を共にしてきた。
そしていま、改めて友人に恵まれたことに感謝する。
いや、感謝してもしきれない。

大切な二人だから、貰ったものはきちんと返して隣に立ちたい。
だからこそ、ここで誓う。



「ああ。約束する。俺は絶対に負けねぇ。」



結果を残すことで、俺は俺の誠意を見せる。













Reflection


長かったレギュラー騒動編も、一段落。
滝さんがテニスと氷帝チームに対して誠実であったように、宍戸くんも宍戸くんなりの誠意の見せ方を見つけます。
騒動編、残りもう一話お付き合い下さい。

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