「何かあったの?」
「何かって、なんで?」
「何か涼丞、テンション高い。」
そう言うと、少し驚いた表情をされた。
いくら涼丞がポーカーフェースだからと言っても、これでも 幼馴染だからそのくらいの変化には気付く。
理由を聞くと、 気になっていた問題の解き方を思いついたらしい。
数学かなにかだろうか。
涼丞の頭がいいのは昔からよく知っている。
このまま小難しい話になると困るので、先に話題を変えてしまうに限る。
「新しい学校、どうなの?」
「…それは普通、俺が先に聞く台詞じゃないの?まぁ、いいけど。俺は可もなく不可もなく。それなりに毎日楽しい。リョーマの方こそ、学校は慣れた?」
「別に。フツーだけど。」
「けど?」
出された緑茶とえびせんを摘みながら、適当に答える。
授業は特に面白くも何とも無い。
それでも。
「まぁ、テニス部は面白いよ。」
「へぇ。」
「いろんなテニスが倒せるし。」
「倒す、ね。リョーマらしい。一年でレギュラーだったら将来有望だな。」
ただ、俺にはお前が部長やってる姿は想像できないけど、と言って涼丞は意地悪そうに笑った。
確かに、そういうのは嫌いなので、もしそんなことになりそうになったら堀尾あたりに押し付けてやろうと思う。
そんなことを考えていると、涼丞は何気ない口調でさらりと聞き捨てならなことを言った。
「俺もこの間、氷帝の都大会三回戦は観に行った。自分でしようとは思わないが、観てる分には面白いな。」
「...ねぇ。テニスの試合、興味あるなら今度青学の試合、観に来なよ。青学、応援して。」
小さい頃から涼丞はあんまりテニスに関わって来なかったように思う。
一緒にテニスをしようと誘ってねだっても、「俺じゃ相手にならない」と言って決してコートに入らなかった。
俺は勿論、親父も残念がって(何せ運動神経が抜群に良いのだ。)しつこく誘ってみたのだが、一向に折れる気のない涼丞に、こちらが諦めざるを得なかった。
…今でも少し不満だ。
だから、テニスに興味を持ってくれたならば、と思って誘ってみたのだが。
「生憎だけど、それは無理。今年は氷帝生らしく、氷帝の応援することにしてるんだ。それにこれでも各校テニス部に知り合いがいるから。」
青学だけ贔屓できない、と言う涼丞に、溜息を吐く。
そういえば、涼丞には確か従弟がいて、そいつもテニス部だと聞いたことがある。
ダメ元で聞いたことだから、断られるのも予想してたけど、やっぱりちょっとムカつく。
「そういう奴だよね。涼丞って。ハクジョー者。」
相変わらず、涼丞の手で弄ばれていたクッションを乱暴にとりあげて、顔を埋める。
子どもっぽい行動だ、と思うけれど相手が涼丞だから別にどうでもいい。
「ああ。そうだな。薄情者なのは自分が一番よく知ってる。…でも、青学の応援はしないけど、」
「けど?」
頬杖をついて、こちらを眺める涼丞の口元が、ゆるりと弧を描く。
「リョーマ個人の応援をしないとは言ってない。」
つまり、試合を見に来てくれるらしい。
思わず目を見開いて幼馴染の整った顔をまじまじと見つめていると、耐え切れなくなったのかくつくつと笑い始めた。
「…ほんっと性格悪い。」
来てくれるなら来てくれると最初から言えば良いのに、一度失望させてから手のひらを返すなんて、趣味が悪いと思う。
「今さら、だろ?」
そう言って楽しそうに笑った涼丞に返事の代わりに溜息を返した。
Reflection
涼丞にからかわれるリョーマ。
解き方を思いついた問題、というのはお察しの通りα捜索作戦のことです。
REPLAY
Copyright c 2012 Minase . All rights reserved.