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ひとこと言ってやらないと気が済まなくて、引越し直後で片付かない家を飛び出してきた。
不機嫌なのを隠しもせずに対峙した幼馴染は、相変わらずだった。






004:嵐の前のなんとやら 
【越前リョーマ】







「オレ、聞いてなかったんだけど?」


「言ってなかったからな。」


主語を省いても意味は伝わったようで、当然とでも言うように返ってくる。
俺にとってはテニスで楽しめれば場所なんてどうでも良かったんだけど、やっぱり不愉快で。


「東京に帰ってきてるなんて知らなかった。」


「俺も知らなかった。お互い様だろ?」


確かに、俺は涼丞に日本に帰ることを言わなかった。
いきなり涼丞の家を訪ねていって、驚かせてやろうと思っていたのだ。
しかし、まさか涼丞も神奈川から東京に引っ越して来ていたなんて知らなかった。


「で、なんで学校、違うわけ?」


「知らなかったんだから仕方が無いだろう。」


雑多に積まれた段ボールの荷解きをしながら、片手間で答える涼丞は冷たい男だ。


「じゃあ、今から変更してよ。」


「もう手続きも全部すんだし、無理。」


「…ハジメテの日本での生活に戸惑う幼馴染を見捨てるんだ。ハクジョー者。」


「薄情で結構。俺の幼馴染は図太い神経してるから、大丈夫だろ。東京に来てやっただけでもありがたく思え。」


「俺のためじゃないくせに。」



言い争うのも馬鹿らしくなってきた。
なんだか俺だけ子どもみたいで気に入らない。
まだ部屋の片付けも済んでないし、腹が立つからさっさと家に帰ろう。


「もう帰る。」


相変わらず段ボールの中身を広げては整理している背中に向かって一応、声をかけて立ち上がる。


「リョーマ。」


「…なに?」


振り向いた顔がふんわりとした笑みを浮かべる。
滅多に見れない表情に、一瞬呆然とする。


「言うの忘れてたけど、久しぶり。会いたかった。」


ホント、狡いやつだ。
そんな顔で言われてしまったら、拗ねているのも馬鹿馬鹿しくなる。


「…ばかじゃないの。」


俺の些細な仕返しは全く刃が立たず、ますます男前になった幼馴染はにっこりと微笑んだだけだった。















Reflection


ツンデレリョーマくんとの再会。
涼丞は千石家居候時代は両親に会いにちょくちょくアメリカに行っていたので、リョーマとの再会は2年ぶりくらいです。
その間も、メールや国際電話でのやりとりはしています。

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