「まさか満点を叩き出すとは思っていなかった。」
近くで見てきたから、実力を隠していることには気がついていたし、予想はしていた。
しかし、目の当たりにしてみると、やはり圧倒される。
全力で取り組んだが、敗北してしまった。
いつものテストも気を抜いているわけではないが、今回は特に力を入れて勉強した。
自身の分析で出題される確率が低いだろうと睨んだ、いつもなら軽く見直す程度に留めるような些末な部分まできっちりと復習した。
それでも、1点落としてしまった。
「自分でも、なかなかに頑張ったと思う。」
隣で順位表を眺める涼丞の表情はあくまで冷静だが、その瞳は満足気な色をしている。
こうして、俺から持ちだした勝負は涼丞の勝利で終わったのだが、
やはり納得の行かないものもいるようで。
「藤堂!なんだこの点数は!!!」
「…真田。」
青筋を立てて涼丞に詰め寄る弦一郎は、今回5位。
人間が真面目なので、どんなに部活が忙しくても勉強を怠ったりすることはない。
毎回10番以内には確実に入っている。
そんな弦一郎からすれば、これまで全力を出さなかった涼丞の態度に腹を立てたくもなったのだろう。
「できるなら最初から全力でやらんか!たわけめ!」
弦一郎は一度怒ると納得するまでなかなか冷めないタイプだ。
今も腕を組んで涼丞をじっと睨んでいる。
なかなかややこしいことになった。と他人ごとなので傍観していると。
「『最後』だっていうのが、ここまでの結果を出させたんだと思う。」
眉を寄せ、少し苦しそうな表情で涼丞は言った。
弦一郎の眼が見開かれる。
「最後に蓮二に挑まれた勝負、必ず勝って心残りなく氷帝に行きたいと思ったんだ。…これまでの人生で一番勉強した数日間だった。」
そう言って、物思いに耽るように窓の外に視線をうつした。
ものすごくわざとらしいが、弦一郎には効果覿面だったようで、怒りのオーラが徐々に申し訳なさそうなものへと変化し始める。
「今は後悔してるよ。最初から、もっと精一杯、勉強してれば何か変わってたかもしれない、って。」
嘘つけ。
心の中で盛大に突っ込んでしまった。
俳優顔負けの演技で、視線を床に落とし、拳をにぎりしめた涼丞の肩が微かに震えているのが見て取れる。
笑いをこらえている確率、98%。
「…すまない、藤堂。言い過ぎた。」
「いや、確かに真田の言ったとおりだよ。いまさら後悔しても、遅いよな…。」
「藤堂…。あまり気を落とすな。気付いただけでも大きな進歩だ。今からでも、遅くない。」
さきほどまでの怒りは何処へ言ってしまったのか。
あろうことか弦一郎は涼丞の肩を叩いて慰めの言葉までかけると、静かに教室へ戻っていった。
「…涼丞。」
「どうかしたか、蓮二?」
言いたいことはいろいろあったが、呆れたような溜息をひとつ吐くだけにとどめた。
…とりあえず、騙されやすすぎる弦一郎が心配だ。
Reflection
立海でもテストの話題。
こちらも一点差。涼丞の勝利です。
そしてあっさりと涼丞の演技に騙された真田がひたすら愛しいです。
かわいいやつめ。
REPLAY
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