都内某所、なかなかの高級住宅地。
両親がこだわりにこだわって、完成までに2年を費やした新しい家。
広さも申し分なく、デザインも素晴らしい。
(有名な建築家に設計を頼んだらしいけれど、俺はそういうのに明るくないので全くわからない。)
「…これから寂しくなるわ。」
実年齢よりも10は若く見える祖母はほんとうに寂しそうに呟いた。
もともと、父が帰国してから家が建つまでの間の仮住まいとして、祖父母の家にお世話になっていたので、家が建ったいま、その必要は無くなった。
そしてそれは同時に俺が立海生であるメリットもなくなるということだ。
祖父母の家が神奈川にあったから(言ってしまえば通学に楽だという理由だけで)立海に入学したのであって、東京からわざわざ立海に通うのは面倒だ。
…と、以前の俺なら迷うこと無く東京の中学に編入を決めていた。
しかし、立海で過ごした二年間はそれなりに居心地が良かったので、多少の未練がある。
正直、寂しいと思う。
「ねぇ涼丞。もしも立海で過ごしたかったら、涼丞だけおばあちゃんの家に残ってもいいのよ?」
そして実際、それも選択として可能なので悩んでいるのだ。
有無をいわさず東京で家族3人で住む、と決定されていたのなら、文句を言わずについて行っただろう。
しかし、両親は選択を委ねてくれた。
つまり、俺の気持ち次第というわけでして。
「東京の中学校に編入するとしても、新年度からになるだろうから、もう少しゆっくり考えていいからね?」
「高校のことも見据えて、しっかり考えなさい。」
そうは言ってくれているものの、早く決めるに越したことはない。
立海から編入、となると大抵の学校なら受け入れてくれるので、東京の学校もよりどりみどりだ。
氷帝やルドルフなんかにも興味があるし、編入するのも悪くないと思う。
これから原作で見た、あのテニス(とはもはや呼べない超人的スポーツ)が見られる学校なら、どこでも面白そうだ。
山吹にはキヨがいるし、まだ何の連絡もないが青学には帰国したリョーマが入学してくるはずだから、一緒に通ってみるというのもアリと言えばアリかな、などと考えていると、ちょうど頭に思い浮かべていた人物から電話がかかってきた。
「キヨ、どうした?」
『つれないなぁー。用がなくちゃ電話しちゃダメなの?』
まるで恋人に言うかのような台詞を吐いたキヨにわざと聞こえるように溜息をつく。
『涼丞、つめたい。』
「なんとでもどうぞ。で、ほんとは用があって電話かけてきたんだろ?」
『そうそう。今度の週末、遊びに来ない?久しぶりに会いたいなぁー、なんて。』
ご都合は如何でしょう、なんておどけてみせるキヨに了承の返事を返す。
ちょうど良いからと、学校選択のリミットもキヨを理由に同じ日に設定してしまうことにする。
「俺も会って話したいことがある。」
『えー。やめてよねー。涼丞が改まって話があるって言う時は良い知らせじゃないことが多いから不安だよ。』
「そうだったか?」
『そうでした!…とにかく、来週たのしみにしとく。だからあんまり心臓に悪い話は勘弁してね。』
「善処します。」
来週なら学校のことも結論が出ているだろうし、キヨには直接報告しよう。
そうと決まればとりあえず、資料だけでも取り寄せなければ、とPCの電源に指を伸ばした。
Reflection
涼丞サイドのお話はなかなか更新できていなかったので、立海ライフがポッカリ空いてしまっています。
今後、少しずつ書いていきたいなぁ、と思っています。
…思ってはいます。
REPLAY
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