こけのむすまで。











千石家にお世話になって早六年。






とうとう両親が帰国するそうです。







006:いざ、神奈川。












「と、いうわけで俺は神奈川の立海大附属を受けることにした。」




「はぁ。涼丞はいつも唐突だよね。」








帰国して暫くは神奈川の父の実家で暮らすことになった。


都内に新居を探すつもりではいるらしいが、日本での生活に慣れるまでは実家で生活するらしい。


伯父さんは、俺がこのまま山吹中に進学したいのならまだ家にいてもいい、と言ってはくれたが、せっかく家族が揃うなら一緒に暮らした方がいいに決まっている。








「でも、また伯父さんと伯母さんが日本に慣れたら東京に帰って来るんでしょ?」




「ああ。一年か二年くらいで転校することになると思う。」




「だったら東京にいればいいのに、って言いたいところだけど、涼丞は家族大好きだから無理だよね。」




「ああ。清純と離れるのは寂しいが、両親と暮らせるのは久しぶりだからな。」




「たまには会いにきてよね。」








そんなに遠くに行くわけじゃないんだからさ、と言って、清純は柔らかく笑った。








「清純も、落ち着いたら遊びに来てくれ。」








この六年、共に過ごした従弟は俺の言葉に嬉しそうに頷いた。














































神奈川に住むなら立海に通うしかない、と思った俺は精神年齢が自分の半分くらいしかない子たちと一緒に試験を受けて、無事に深緑の制服に袖を通した。


そして迎えた入学式。










「国歌斉唱!」








君が代を口ずさみながら、こっそりと周囲を観察してみる。


入学式なんて、どこの世界でも変わらないものなんだな、なんて思っていると、目立つ色の髪をしている新入生を何人か見つけた。


…髪じゃなく、頭皮が目立っているのもいるけど。


そもそも、別にキャラに関わって物語を引っ掻き回してやろうとか思ってるわけじゃないので、原作に登場するキャラと特別親しくなりたいなんて思わない。


けれど、一年生の頃から王者と呼ばれるだけのテニスの実力を持つようなプレイヤーなら、単なるテニスファンとしても興味がある。


清純の影響でテニス観戦が新たな趣味として増えた俺にとって、中学生と言えどレベルの高いテニスを見られることは純粋に嬉しい。






(楽しい中学生活になりそうだ。)




















「このクラスを受け持つことになりました、高坂です。よろしく。」








担任はおっとりしたロマンスグレーの国語教師だった。


そして、早速籤引きで席替えが行われたのだが。








(前の席のおかっぱ、絶対そうだよな。)








あんなに見事なおかっぱ頭、しかも眠ってるのか起きてるのか分からないような糸目。加えて机の横のテニスバッグ。


…柳蓮二だ。ほぼ確定。


新しいクラスと学校に多少は緊張しているのか、ほんのりと頬が紅潮している。


原作ではあんなに容赦の無いデータテニスをプレイしていたのに、小さい柳はなんだか可愛らしい。








「すまない。このプリントなんだが、提出は明日でよかったのか?」








突然声を掛けられたので、さっきまで穴が空くほどおかっぱを眺めていたことがバレたのかと一瞬焦ったが、どうやら単にプリントの提出期限が気になっただけらしい。








「A組の前に出ているボックスに入れるように、って掲示に書いてあった。期限はたぶん明日までだったと思う。けど、俺はもう出してきた。」




「そうか。ありがとう。俺も出して帰ることにしよう。それと、遅くなったが俺は柳蓮二と言う。」




「藤堂涼丞だ。よろしく、柳。」




「蓮二でいい。同じ苗字の女子がいるので少しややこしいからな。」




「なら俺も涼丞で構わない。」








まさか早速名前で呼び合う仲になるなんて、思いもしなかった。


けれど決して不快では無く、むしろ同い年の子どもより大人びている柳蓮二とはなかなかに良い関係を築いて行けそうな気がする。








「では改めてよろしく、涼丞。」








二度目の中学生活、楽しまなきゃ損だ。



























Reflection




久々の涼丞サイド更新。


ようやく中学生にしてあげることができた!


立海入学。第一村人は柳です。


おかっぱ柳は可愛らしいと思う。




REPLAY
Copyright c 2010 Minase . All rights reserved.