「あ、謙也くん、おはよー!」
「おはようさん。なぁ、小春…なんや、今日の財前、機嫌悪ないか?」
「気付いた?そうやねん。なんか、珍しく一番に朝練に来とったらしいわ。」
「一番!?銀さんより先にか?」
「そう。銀さんが来たときにはもう、着替えてああやってサーブ練習しとったらしいのよ。」
普段は、ほどほどの時間に来て、ほどほどに練習をしている光が早朝からずっとサーブ練習をしている、というのは相当異常なことである。
「俺、ちょっと様子見てくるわ!」
「ちょっと、謙也くん!」
謙也にとって、光は初めてできた後輩で、口を開けば生意気しか言わないが、気に入っているし、可愛がっていた。
「なぁ、財前。今日、どないしたん?」
「…。」
「無視かい!ざーいーぜーん!」
「…。」
「おい、財前って!なんでそんな機嫌悪いん?」
…可愛がり方には、多少問題があるものの。
「謙也くん、そんくらいにしときって!」
「でも、財前が無視しよんねん!」
「やからって、答えてくれへんのに付き纏っとっても意味ないやろ!」
「でも、後輩のことやろ!小春は気にならへんのか!?」
「それとはまた話が別やろ!」
いつの間にか口論に発展していた言い争いを諌めたのはやっぱりこの人で。
「二人とも、そこまでな。」
腰に軽く手を当ててこちらを見やる白石の姿は、呆れているようにも、おもしろがっているようにも見える。
「誰かて、そっとしといて欲しい時くらいあるやろ。」
「けど、気になるやん…。」
「…まぁなぁ。謙也の気持ちもわからんでもない。財前、二人とも、お前のこと心配しとるってことは、ちゃんとわかっとったりや。」
「…はぁ。夢見が悪かっただけっス。」
ひと通りサーブ練習で発散して落ち着いたのか、渋々ながらも光は口を開いた。
「ものすっごい嫌な夢みて、それで気分悪なっとったんです。すんません。」
「そこまで嫌な夢ってどんな夢やねん!」
「ほんまや。気になるわぁ…。謙也くんなら、どんな夢が嫌やと思う?」
「えっ!?俺?俺は…死ぬ夢とか?」
「やっぱ謙也くんは発想が貧困やなぁ…。」
「うっさいわ!せや、白石はどう思う?」
「そうそう。蔵リンはどんな夢が嫌やと思う?」
「せやなぁ…。好きな子をとられる夢とかは見たないなぁ。」
「…なっ!」
「…動揺したってことは、まさか財前…!」
「図星なん?光ちゃん、好きな子とかおったん?」
「…はぁ。うっさいっスわ。」
しくじった。
動揺してしまったせいで、ますます面倒なことになった、と内心舌打ちをする。
「はいはい、二人とも、おしまい。練習に戻るで。」
「…しゃーない。この話はまた今度な!」
「光ちゃんの恋バナ、じっくり聞かせてもらうで!」
正直、助かったけれど、まだまだ敵わないと改めて思い知らされたみたいで、気に入らない。
「財前。」
「…なんっスか。」
「放課後までには機嫌、なおしとってな。」
そうは言われても、夢の内容が頭から離れない。
「ほんま、嫌な夢や。だいたい誰やねん、アレ。」
もしかしたら、虫の知らせだとか、警告夢の可能性も無くもない。
今夜は帰宅したらへの連絡はメールじゃなくて、電話にしようと思う。
「あんなん、まだには早いわ。…あほ。」
この苛々は、放課後までにはおさまりそうにない。
Reflection
思いつきと勢いだけで書いたIFのIFでした。
一応、光の夢バージョンでは、滝くんの顔と名前はぼやけていてわからない、という裏設定があります。
四天宝寺組は、白石を書くのが楽しいです。パーフェクトな感じが。
そしてREPLAYの忍足一族は、西も東も無視される運命にあります。笑
REPLAY
Copyright c 2011 Minase . All rights reserved.