事件は猫足で忍び寄る


001:不祥事と取引






その日、最初に異常に気付いたのは最も若い局員だった。





「メインコンピュータがウイルスにやられている。」




気が付いた時にはもう遅かった。


本来ならもっと先の未来に寿命を終えたはずの魂は仕事が早く正確なことで評判の精鋭の回収者たちによって刈り取られた後だった。




回収局は大いに焦った。



幸い、管理局は魂の中身まで確認はしないので、魂の持主はこちらでデータを入れ替えれば誤魔化せる。

問題は数だ。予定数に不足していたならば刈り取ってくれば済んだが(勿論、違法行為ではあるがこの際気にしていられない。)

余剰分をどう処理するか。

魂などと言うものは決められた手順をしっかり踏んで処理しなければ後々面倒なことになる。それは非常に困る。



しかし今回のミスを明らかにすることには躊躇いがある。



「こちらの不手際で魂が余ったので助けてください」

なんて仲の悪い処理担当の部署に頭を下げるのもご免だった。

そもそも回収局の人間は皆、所謂エリートで一様に出世欲が強い。
最難関と言われる厳しい試験と胃に穴のあきそうな面接を突破してやっと此処まで来た。

それがコンピュータウイルスのせいで水泡と帰すのだけは避けたかった。

なんとか秘密裏に事を済ませられないものか。



その時、救世主が現れた。



「その魂、NOVAへ譲っては頂けませんか?」




NOVAという組織はつくづく謎な組織だった。

『世界』の研究をしているらしいがその研究内容は一切公開されていない。

決して人には言えないような実験をしている、という噂から『悪魔の機関』だとか『魔王の手先』などと影で揶揄されている。


堅実に働いて実績を積み上げ出世してきた回収局の人間にとってはあまり好ましい存在ではなかった。

しかし同じ組織の自分たちより下の人間に頭を下げなければならない屈辱を思えば、治外法権の得体の知れない組織と取引する方が何倍もマシだった。

こうして回収局は事態の隠蔽工作と引き換えに、文字通り悪魔に魂を売り渡したのだった。






なぜ箝口令が敷かれたはずの今回の事態をNOVAが知っていたのか、問い詰めるものは誰一人としていなかった。

差し迫って自分の身に危険が及ばないのならば問題ない。

できる限り厄介事を避けるのは処世術の基本だ。






Reflection

このあと話はNOVAサイドへ。

この導入部分、書いてる私は楽しいんだけれど需要があるのか不安…

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