結論。
やっぱり君と過ごしたい。
「ねぇ、宍戸。外、待ってるよ。」
部活終わり、ロッカールームでのろのろと着替えていると、黒木にそう声を掛けられた。
最近ようやく話すようになったこのチームメイトは基本的に言葉が足りない。
「誰が?っていうか、俺を待ってるのか?」
必要な情報を引き出すために、知りたいことを聞き返す。
「が、宍戸を、待ってる。」
ぱさり、とタオルが指先をすり抜けて行った。
思い立ったが吉日、と言うことで。
部活帰りの亮を待ち伏せる事にしました。
もちろん、ノーアポです。
さっき偶然出会った黒木くんに伝言を頼んだから、帰ってしまうことは無いと思うのだけれど。
…うん。
まだ嫌われてはいない、と信じたい。
「…、」
大きなテニスバッグを背負った影が私の影に重なる。
「ごめんね、亮。疲れてるのに呼びとめて。」
「いや、大丈夫だ。」
「最近、話せて無かったから。」
懐かしい後ろ姿。
たった一週間かそこら離れていただけなのに。
喉に力が入る。
「…、」
呼んだ声は擦れてしまったけれど、届いたようで安心する。
ちゃんと彼女は振り返ってくれた。
自分の髪とはまた違った、柔らかそうな髪がふわりと揺れる。
「ごめんね、亮。疲れてるのに呼びとめて。」
「いや、大丈夫だ。」
「最近、話せて無かったから。」
話せていなかったのは俺のせいだ。
ここ数日、消えない罪悪感にまた胸が痛む。
こうしてが会いに来てくれるまで逃げて、逃げて、拒否してきたのは俺なのだから。
いつもはギャラリーが占領しているベンチにテニスバッグを預けて、自分も腰を下ろす。
顔を上げるのが怖くて、の影を見つめた。
は鞄は置いたが、ベンチには座らず、立ったままでいる。
話をしたい、と言ってくれたと言うことはまだ嫌われてはいないということだ。
きちんと謝って、自分の思っていることを告げよう。
そう決心して顔を上げた時だった。
「不安にさせて、ごめんなさい。」
首と頭に柔らかい感触。
鼻をくすぐる甘い香りに、抱き締められているのだと気付く。
「ずっと気付かなくて、ごめんなさい。」
首に回された細い腕。
普段は凛と通る声が今は湿って震えている。
「嫌いにならないで。」
微かに聞こえた言葉は俺と同じ気持ちだったから。
「俺も、ごめん。」
本当はもっとちゃんと話すつもりだったけれど、アドリブに弱すぎる俺にはこれが精一杯。
涙でボロボロになった私の顔は悲惨なことになっているだろう。
けれど、女の子は笑顔が一番だと思うので、ぐちゃぐちゃの顔で微笑んで見せた。
「許してあげる。」
もう一度、今度は体を預けるように亮に抱きつく。
規則正しく背中を叩いてくれる優しい手。
その手の分、さっきよりも幸せだ。
Reflection
仲直り!
あまりにも宍戸だけ恋愛に出遅れている上に可哀相な思いをさせたので、ご褒美。
視点がくるくる変わっています。
読みにくかったら申し訳ないです。
最後にもう一度、ハピバ!宍戸!
REPLAY
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